除草にヤギを飼って10年も経ってみたら

Aug 30th 2021
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除草にヤギを飼って10年も経ってみたら

水鳥観察センターでは敷地周りの除草にヤギを使ってみることになり、知り合いから二匹分けてもらうことになりました。ヤギは湿気を嫌うので少し高床の小屋を作ったほうがいい、とか、急な崖でも登るので勝手に逃げないようにフェンスを張ったほうがいいとか、来る前から大騒ぎで設備を整え、柵もこしらえ、ドームの小屋を作って入居を待ちました。
やがて可愛い二匹の仔山羊、ハルちゃんとメルちゃんの兄弟がやってきて任務につきました。2010年のことです。


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その効果は大したものでした、二枚の写真を見てください。下の写真は上が撮られてからおよそ半年後、元気な二匹はセンター南側の草むらを殆ど食べてしまい、除草は大成功。二匹は大スター扱いでした。
もちろん問題がなかったか というとそこは色々あるわけで、中でも最大のものは食べたあとヤギの体の中で変化して出てくるものの問題でした。草は無くなったのだけど、草むらだったところはヤギの糞がそこらかしこに散らばっていて、歩いた靴でそのままセンターに入ったりしたものなら床からなにから部屋中奈良公園のような匂いに包まれてしまいます。一階のスタジオなどは南側のドアー外がヤギのいる場所だったので、入り口に靴拭きマットを二重三重にしても解決は難しく、結局そこのドアーはいつも閉められることとなりました。

ヤギも若いうちはなかなか行動力が有ります。バリヤーをかいくぐって逃亡、ほうぼう探し回るということも数度かありました。ちなみに水鳥センターは山からはかなり離れている場所にありますが、たまに猿が現れたり、鹿が迷い込んでくることもありました。高島ならではです。

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二匹のヤギはとても人気ものなので、毎朝散歩のついでに立ち寄って見ていく人もいました。中には毎日残った野菜を持ってきて(こっそり)ヤギに食べさせている人もいます。なんか、余り美味しいものばかり食べると、草食べなくなるんじゃない… って心配もありましが、特に注意するのも気が引けるし、せっかくヤギ愛してくれているのだし と思ってそう気にもとめませんでした。

それでも一年二年は草は綺麗に食べられていました。なんといってもヤギも成長期です。でも、よく食べられる草とそうでない草の違いは出てきます。葛やれんげの種類、木の葉などはでんぷん質も多いのか食べやすいのかまず最初に無くなります。セイタカアワダチソウや硬い葉のたぐいはなかなか減りません。
やがて3年4年と経ってくると、食べやすい草は食べ尽くされ、その開いた場所には食べにくい草が生えてくるようになります。植生も変わってきたのです。

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ヤギも成長して、若い時のようになんでも食べるということはなくなります。一匹が体調を崩したこともあったり、冬場の草がない時のために飼葉を与えたりすることもあり。また、引き続き毎朝のヤギおばさんの給餌もあるものですから、前ほどには除草の効果は出てこなくなりました。5年ほど前には一匹が体調を悪くしてなくなりました。残った一匹(メルちゃん)も寂しそうになってしまいます。

それでこの写真が一番最近に撮られた写真です、セイタカアワダチソウは生い茂り、元の雑草だらけの草むらが戻ってきています。ただ生えている草の種類は前とは違います。
メルさん(もうメルちゃんとは呼びにくくなってしまいました)は動作緩慢ながらも、人が見えると出てきたり、変わらずセンターのアイドルを続けていますが、除草機としての役目は余り果たしていません。老化ということもありますが、植生の変化が最大の要因でしょう。ヤギがいることで食べにくい草が優勢種になったのです。

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メルさんは相変わらずの様子で、草地をゆっくり動きまわり、時折草を食べたり、小屋の中で飼葉を食べたり、マイペースで目があうと挨拶したりします。もう完全にセンターの主になっていて、柵を超えて出て行く事もなくなりました。
ヤギは十数年は生きるそうですし、まだまだ長い付き合いになりそうです。